途端に苛立ちだして不器用な親切心を挙げるT・M

身は慎重に言葉づかいを選んだ。
「私もN・Tも、M・Tとは幼馴染みでさ。M・Tは現在、男が亡くなったんだ。あちらも現在、精神的に手狭はずだから無理して仲良くする必要はないかもしれない」
 おしゃべりに耳を寝かせる言動は若干あるものの、T・Mは身とは目線を併せずに苦笑をやる。
「でも、やつは乏しい者じゃないんだ。少なからず身にとっては。これだけは分かってほしい」
 一方チックでいて、めっぽう身勝手なつけにT・Mは方法なさそうに頷きながら応じる。
「なるほど、それは自らから聞きました。上、自分も親、亡くしてるんで。それも、とっくに」
 感情の乏しい凍てついた語調だった。身は戻す言葉づかいがなかった。
「およそ、こういうルームには、いつでも来て下さい。上、仮に良かったら、戯画でも貸しますよ。上の棚にあるのが集英社、下なかばは講談社、秋田書店……」
 気に障ったかと思えば、T・Mは何としてでも身をこういう地に留めておきたいみたいだった。M・Tの話題になると、今にも身が自分のマテリアルを離れてM・Tのところへ行ってしまわないか気が気でないのだろう。途端に苛立ちだして不器用な親切心を垣間見せるT・Mは意外にも分かり易い人柄だった。